あの日に置いてきたモノ

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「本当は卒業式でお前に告白するつもりだった」 「……うそだ」 「本当だよ。でもネクタイのこと何も言わねぇお前みて怖くなったんだ。これ、なんとも思われてないんじゃねぇかって」 「……同じだ」 まさかだった。 あたしはネクタイのついてない先輩をみて、先輩はネクタイの事を言わないあたしをみて、お互い怖気付いたんだ。 「さっき、コイツから電話きてネクタイ持ってこいって言われた時はなんだと思ったわ」 「えっ、なんでネクタイがまだ先輩のとこにあるってわかってんの?」 「みんな知ってるし。誰かに渡すわけないからあるんだろうって思ってた」 友達の方をバッと向けば「いい加減くっつけよってみんな思ってるわー」の他の友達もみんな笑ってる。 「先輩のバカ」 「うん、ごめん」 「大好き」 「うん、俺も」 あたしの手を掴んで「ちょっと外でよ」ってそのま ま中庭みたいになってるところへと歩いていく。 「お互い同じことしてたんだな」 「……うん、先輩にはもう少し頑張って欲しかったです」 「お前こそ、ネクタイは?って言えよ」 「言えないですよ。ついてなかったら諦めるしかないじゃないですか」 思いが通じあったいまもあの日のことを思い出すと胸が痛くなる。 「ずっと届けたいと思ってたんだコレ」 あたしの手にネクタイを乗せると「これからはお前が持っててね」って微笑む。 やっと届いたネクタイとふたりの想い。 ゆらりと顔が近づいてきて重なった唇。 どれだけ近くにいても遠いと思っていたふたりがやっと1番近いところにいる。 「あの日に置いてきたモノをやっと届けられた」
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