あの日に置いてきたモノ

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「だいたいさぁ、あの人本当に人たらしというかなんというか……」 「人たらし?」 「こっちは誘われたら嬉しいから行くじゃん。でもいつまでも何も言われないし本当にただの友達ってか女として見られてないんだなぁって思ってさ」 はぁーっとため息をつきながら目の前のお酒をグビっと飲む。 あぁ、美味しい。そしてむしゃくしゃした気持ちを流してくれる最高の飲み物。 「普通に家飲みもするけどさ、なーんもないの。悲しいくらいに何も。酔ったフリして抱きついたりするけどなにも。女やめたくなるわ」 お酒が進んでいるあたしはどんどん饒舌になる。 友達は聞き役に徹しているんだろう、相槌すら打ってくれない。 「こんな可愛い子を女に見ないとか酷い男だね」 聞き役が変わったらしい。急に男の声になった。 誰かなんて確認するために顔をあげるなきゃならないけど、面倒くさくてそのままお酒を口にして、また話し続ける。こいつ先輩の声に似てるからもっと相槌打ってくれないかななんて思いながら。 「まぁさ、こっちが勝手に好きになったわけだし。しかも先輩はそれを知らないし。なにも先輩はわるくないんだけどね」 もういちどグラスに口をつけて「でも、好かれたいと思うよねぇ」って言ったところでグラスが空になったことに気づく。 「すみません、ハイボールひ「あっ水にしてくだはい。ハイボールなしで」
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