翼覆嫗煦

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揺蕩(たゆた)うて 流れ流れて (たなごころ) 冷めた爪先 覆いて温む 自分に価値なんてないと思って生きてきた。 一所(ひとところ)で長いこと居ると 自分の醜さや、 できの悪さを見抜かれそうだから 怖くて、 バレて愛想を尽かされるその前に逃げて回ってきた。 暖かい場所は、キケンだ。 欲が出て、もっと居たくなってしまうから。 欲が透けて見えて、なにかマズいことをやらかしてしまいそうだから。 ずっとそう考えて やってきたのに。 その(てのひら)はキケンだ。 小さくて、弱くて、冷え切っているくせに 人のために何かをしようとする。 ちょっとの熱さで火傷するクセに。 重い荷物を持つのもやっとなクセに。 薄い紙ですら傷を負うクセに。 目を離すと直ぐ無茶をしようとする。 だから、 俺の手を使え。 まずは一度、暖まれ。 5f695f8d-d471-4467-aa62-f6cf9d71ba45 流れ着く
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