カルサリのよる

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 あたしはソファーに座ってクッションを抱きかかえたまま、玄関の飛田林くんを手招きした。「は?!」と返されるかと思ったけど、彼はドミノを踏まないように注意深く廊下を進んできた。驚きの余韻が残る顔は、今朝よりずっと親しみがある。 「はいこれ。あたし下向いてるから着てみてよ」  Tシャツを差し出すと、彼はわずかに眉を寄せつつ受け取った。クッションに顔を埋めて、着替えるのを待つ。  少しすると「え、なにこれ」と予想どおりのつぶやきが落ちてきたので、あたしはすっくと立ち上がって、自分のTシャツの裾をピンと伸ばしてみせた。 「じゃじゃーん! おそろいのパンいちTシャツです! これでカルサリキャンニトができるね。にしてもこれ、舌噛みそうなんだけどフィンランド人の舌ってどうなってるの?」  ぽかんとした表情で、飛田林くんはあたしのTシャツと自分のTシャツを交互に見た。その正面にはマッチョの上裸――つまり男性の胸から臍にかけての裸体が描かれている。 「え、これ、マッチョの裸体?」 「うん。女の人の裸を描くのは、うーん……って思ったから、あたしのTシャツも男の人の裸にしたんだよね」 「小湊さんが描いたの?」 「探し回ったけど見つからなかったから、Tシャツ買ってきて描いた」
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