カルサリのよる

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 あたしが答えると、飛田林くんは噴き出した。いったいなにが笑いのツボにハマったの? よくわからないけどツボ浅すぎじゃない? というくらい腹を抱えて。 「なんでそんなに笑ってるの?」 「だってマッチョの絵、ひどすぎ! グラデーションはあんなきれいに出来てるのに。これはさすがにひどいだろ」  濡れた目尻で貶された。油性ペンで描いた筋肉はまるでデタラメで、たしかに低クオリティだった。 「グラデーションに塗るスキルとお絵描きのスキルはまったく別物だよ」 「それはそうだけど。ていうか小湊さん、もしかして……」 「うん。昨日のこと思い出したよ。ぜんぶね」  昨夜。酔っぱらったあたしが「家で全裸になる人がいるらしいけど、それって逆に落ち着かなくない?」と言うと、飛田林くんは「フィンランド語では家のなかでパンツ一丁でお酒を飲むことをカルサリキャンニトって言うらしいよ」となんだかこじゃれた雑学を披露した。その手元ではビタミンカラーの液体がゆったりと揺れていた。  クールな見た目のわりにアルコールが苦手で、水以外は唯一オレンジジュースが好きだというのはあまりにも意外で、ちょっとかわいいなんて思ってしまった。
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