カルサリのよる

16/21
前へ
/22ページ
次へ
「昨日はごめんね。カルサリキャンニトする! ってあたしがガンガン脱ぎだして困ったでしょ」  ふたりで廊下のドミノを拾い集めながら、あたしは謝った。飛田林くんはすっかり笑いの引いた冷ややかな顔で 「うん。あれは困った。そもそもパンツ一丁っていうのは多分男性の場合のことで、ただしくは下着姿で(、、、、)、みたいだけどね」 「そうなの? 言ってよ!」 「言ったけど聞かなかったんだよ」  あ、ごめんごめん。あたしは情けなく謝りながら、改めて今朝のことを思い起こす。 「今朝、ごめんね。妹にまで同じこと言われたら、そりゃ腹も立つよね」 「べつに……。こっちこそうちの兄がひどいことしてるし」 「じゃあ、おあいこかな」  あたしは笑いながら、手のひらのドミノに視線を落とした。  飛田林くんのお兄さん――バイト先の先輩は、あたしが好きだと言った日から、きれいさっぱり音信不通になった。  毎日連絡とって、何度もデートして。自分を丸ごと愛されていると感じるようなセックスだってした。  それなのに先輩は、好きだと言ったら表情を失くして、あたし達つき合ってるんだよね? と訊いたら「連絡するから、またね」と返した。  連絡なんてなかった。「また」なんて一生こなかった。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加