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カルサリのよる
パンいちだった。
朝一番の日差しにたっぷり満たされた部屋で目を覚ましたあたしは、まずパンいちであることに気がつき、つぎに部屋の隅に身を寄せる巨大なまっしろの塊と床一面に散らばる鮮やかな長方形に気がついた。
え、あの塊……人間? しかもサイズ的に男?
ブランケットを顔の下半分まで引き上げる。だけど身体を隠したところで、あたしに武器はなにもない。
助けておかあさんっ。いや、警察。まずは警察!
冷静を取り戻したものの、いつもベッドサイドに置いてるはずのスマホが見当たらない。いったいどこに置いた? あたしのばかばかばかっ!
心拍数が急激に増していくなか、塊がのっそり起き上がる。
「小湊さん……。起きた?」
あたしに背を向けたまま、塊が訊いた。聞き慣れない低い声はお腹にずーんと響いて、ますます身構える。
だけどあたしの名前を「さん」づけで呼ぶところや遠慮がちな口調からは、完全に腹まで真っ黒な悪人とはいまいち考えにくかった。
「あの、服」
塊がぼそっとつぶやく。
「はい?」
「小湊さん、ちゃんと服、着てる?」
「えっ、あっ、はい」
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