カルサリのよる

21/21
前へ
/22ページ
次へ
 雪崩れていく夜をどうにかやり過ごしているのは、あたしだけじゃない。その事実があたしを救うわけじゃないけれど、それでも少し軽くなるものもある。  軽くしたり紛らわせたり、そうしているうちにいつかは手放せるだろうか。 「やろっか、ドミノ」  力なく言うと、飛田林くんはうなずいた。 「オレンジジュース飲む?」  飛田林くんはまた頷いた。 「お腹減ったんだけど、ピザ頼んでいいかな。チーズたっぷりの、ぎとぎとこってりしたやつ食べたい」  クーポン持ってる、と飛田林くんはポケットからスマホを取りだした。そしてなぜか急に、ぶはっ! と大きく噴き出した。 「え、どしたの?」 「だめだ。このTシャツ、やっぱうける。あと、ドミノ世界記録は499万個らしいから」  飛田林くんはひーひー笑った。まっしろだった大きな塊は、大きな笑い袋になった。  感情、じゅうぶん顔に出てないか? それともそれだけあたしの絵心がやばいのか?  疑問に思うところはあるものの、あたしも負けじと笑って 「それじゃあ今夜は朝まで寝かせないから。覚悟しろよ」  と男前にかました。  ――了――
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加