カルサリのよる

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 * * *  アメリカンチェリーをくわえたセリちゃんは、眉を歪めてあたしを睨んだ。かわいさが売りのカフェにそぐわぬ、すごみのきいた顔。  なになに! なんで? 怯むあたしにチェリーの茎を投げつける。 「奈央(なお)からあの男の人に絡んでいったのになに言ってんの? うちに行こうって、あんたから強引に誘ったんだよ?」 「え、うそでしょ?」 「こんなうそついて私になにか得がある?」 「ない……」  どうやらあたしはセリちゃんたち女友達数人と居酒屋へ行き、となりの席に座っていた男性グループと意気投合したのち、あの男にぐいぐい誘いをかけたらしい。  居酒屋へ行った記憶はある。たこ焼きロシアンルーレットに当たって、ヒーヒー叫びながら強炭酸サワーをがぶ飲みしてさらに悶えた記憶もある。となりの席のグループと、みんなで飲もっか! と乾杯したのも覚えてる。  だけどそこから先の記憶は、すこんときれいに抜け落ちている。 「あの男の人も困ってたんだよ。それをあんたが見返すだの世界にかますだの、わけわかんないこと言って連れ出したんだよ」 「よくわかんないけど、あたしめちゃくちゃ痛い女?」 「かなりね」
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