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その日の朝焼けはとても美しかった。いつもと変わらないはずなのに、比例して国を包む空気は重く、耳を澄ませればどこかからかすすり泣きが聞こえた。女王の訃報が届いた国民が悲しんでいるようだ。
「流石、屍商人の商品だね。誰もが本物の私だと思ってる」
暗い空気の中、アベルが楽しそうに声を弾ませた。
「当たり前さ。なんせ、俺の作品だもの」
ジルは胸を張った。自慢だが屍商人として最高傑作といっていい出来だった。このまま墓にしまい込むのは惜しい程だ。
「大丈夫かな?」
「大丈夫さ!」
「成功した?」
「大成功だよ!」
「ずっと一緒にいられる?」
「ずっと一緒だ!」
アベルの問いかけに、ジルは自信満々に答えた。子供の時のように視線を交わし、どちらともなく頬には涙が伝う。
「なあ、アベル。今度は俺を頼ってよ。俺、強くなったんだから」
「勿論だよ。ジルも私を頼るんだよ」
精巧に作られたちぐはぐ人形を前に悲しみに暮れる王都を駆け抜けて、記憶のものより薄れた腐臭に身を浸した二人は繋いだ手に力を込めて、笑みを交わした。
この先に輝かしい未来はなくても、二人はこれが幸せだと分かっていた。
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