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ずる、……ずるっ。ずる。ぱきッ、ずる……。
何か引きずる音が聞こえた。時折混じるのは何かが折れる音。それは木の枝が折れる音と酷似している。
重い瞼を無理やり持ち上げたジルはかすれた視界を鮮明にすべく瞬きを繰り返した。
黒い靄がうぞうぞと忙しなく動いている。その手のような部分には赤と白の棒が握られていた。黒い靄がルゥルカだと気付いたのはその手に握られているのが道端に転がっていた男の腕だと知った時。男の亡き骸を皮袋に押し込んだルゥルカは当たりをきょろきょろと見渡した。
血だらけで伏しているジルの事も死体だと思ったのかルゥルカが皮袋を広げた。他の死体と同様に皮袋に仕舞おうとジルの腕に触れた。
「……」
ルゥルカが息を飲み込んだ。生者に興味はないのかジルの腕を離すとこの場を離れようとする。
ジルは咄嗟にローブの裾を掴んで止めた。
「待って」
痛みで蠢きながらジルはルゥルカの胴体に縋り付く。
「助けたい人がいるんだ」
ルゥルカがジルの腕を解こうともがく。
ジルは離れまいと拘束する力を強めた。
「俺を助けて。その人を助けたら俺の体は好きにしていいから」
ルゥルカは抵抗するのを諦めたらしい。小さな舌打ちと共にジルの腹部に衝撃が走った。
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