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スラム街育ちのため腐臭は慣れ親しんでいるが遺体をまじまじと見ることがなかったジルは両目を大きく見開かせた。ルゥルカか死体を買い取っていることは知っていたが何をするかは誰もしらない。急に恐ろしくなる。
そんなジルの不安をよそに、ルゥルカはピンセットでうじ虫を摘み、皿へと移していく。慣れているのか手際がいい。
うじ虫を全て取り除いたら遺体に水をかけて肌にこびりついた血を擦り取り、溜まった膿を流し始める。表面が綺麗になったら今度は喉奥へ水を流し入れ、遺体をうつ伏せにして背中を押してを繰り返す。吐き出される水が透明に近い色合いになった頃、遺体の肛門にまで水を流し入れた。細い棒を差し入れて、中身を搔き回し、可能な限り綺麗に洗浄する。
体を綺麗にしたら次は溶けて空洞となった両眼に硝子を当てはめ、うじ虫によって穴だらけになった箇所に粘土のような白い土を入れる。最後に青黒い肌に白粉を叩いたらルゥルカは満足そうに立ち上がった。
「ふぁるがぎゃ じゅあ ぢゅらじゃう るぅ るかぁ」
ルゥルカが不可思議な言葉を発すると遺体はぎこちなく動き始めた。パキッと何かが割れる音を響かせながら、油が切れたブリキ人形のように、魂というものが感じられない無機質な動きで上半身を起こす。
どう見ても動くことがない死体が自ら動き出した。ジルが目を剥く傍らでルゥルカは死体を舐めるように見渡し、ぎひぎひと笑い声なのか分からない不気味な声を発した。
放心したようにその光景を眺めるジルをよそに、ルゥルカはもう一体、また一体と屍を作り直していく。
結局、ルゥルカは五体もの死体を作り直した。
その間、ジルには一瞥もくれなかったが、空腹から食料を探しに部屋を出て行こうとしたら鋏が飛んできたので意識は向けていたようだ。
ルゥルカの許しが出るまでの間、ジルは空腹と眠気と戦いながら連れ去られた親友について考え込んだ。
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