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無垢 (※R18描写注意)
どこをまさぐっても柔らかさの無い花瀬の体。
俺は、セックスは五感で相手の全てを感じて愉しむものだと思っているが、その点で言うなら花瀬の体の触感は間違いなくイマイチだ。ひんやりして滑らかな肌は悪くないとしても、何処もかしこも骨が浮き出ているし、関節だって目立つ。見たところ骨格が華奢だから、肉が付きにくいのかもしれない。
(こんなの見たら、大事に抱くしかないじゃないか...)
男だから多少無茶しても大丈夫だろう、なんて密かに抱いていた思惑は呆気なく霧散して、どこもかしこも細い体を丁寧に扱う事にした俺。一夜きりの割り切った関係だとしても、一応は後輩だ。それに、俺が良いんだと選んでくれた。
困惑したけど、実は嬉しかった。
俺は優男顔だと言われ、それなりにはモテてきた。が、何故か本命にはなりにくいらしく、これまで誰の一番になった事も無かった。そんな俺が、例え顔だけだとしても、初めて『一番好き』だと言ってくれた相手を粗末に扱いたくはないと思っても、不思議は無いだろ?
どうせやるなら、お互い良い思い出にしたい。
だが、そんな意気込みで臨んだその先は、思い通りには進んではくれなかった。
「...っ...ん、んっ...」
鎖骨から胸へと唇と舌を這わせる。花瀬はびくびくと小さく体を跳ねさせて、吐息のようなか細い声を漏らした。細過ぎる腰を見ながらジーンズに手を掛けて脱がせると、これまた服を着ていた時の目測よりもずっと細い太腿が露わになった。やっぱり只の痩せぎすの男の脚だ。色気なんか無い...筈なのに、ゴクリと唾を飲んでしまったのは何故なのだろう。昨日も一昨日も女は抱いてるのに、まるで欲求不満の思春期のガキみたいに興奮が収まらない。
丸裸に剥かれた、白く弱々しい裸体。
俺はその細い両脚の間に立て膝になって体を割り入れ、花瀬の太腿をゆっくりと、味わうように撫で上げた。
「...あ...先輩...」
俺を呼ぶ声が微かに震えている。
「どした?」
「あの...僕のバッグの中に、ローションが...」
「ああ...」
(そういや準備して来たって言ってたな)
さっきの花瀬の言葉を思い出して、そういう事かと思った。ローションならウチにも残っているのは確認済みだが、出しておかなくて良かったと思う。考えてみれば、まっさらな花瀬を抱くのに別の人間との使い回しを出すのも失礼な話だ。出しておくか迷った時、興醒めを恐れて止めた30分前の自分を褒める。
花瀬に言われたバッグを探して周囲を見回し、すぐそばのベッド脇に腕を伸ばした。そこにはいつも花瀬が斜め掛けにしているグレーの大きめショルダーバッグが置かれていて、俺はそれを鷲掴んで花瀬の顔の横に置く。
「すみません、出してもらえませんか。先に置いとけば良かったですね...」
中断してしまったのを申し訳なく思っているのか、花瀬はバッグを開けてローションの容器を手にした俺に謝って来た。
「や、用意が良いんだなと感心した」
「いえ、お願いしてる立場なんで、これくらいは」
「立場て」
花瀬の驚くほどの律義さに、俺が思わず頬を緩ませた時。またしても花瀬の天然爆弾が投下された。
「一応、後ろの方も洗浄して指で慣らしたし、そのままでもいけるかなと思ったんですけど...先輩の、思ってたより大きいので、やっぱ必要かなって...」
「...!!」
(準備って、準備ってそういうとこまで?!)
俺の脳内に、一人で自分の尻穴に指を突っ込んでアンアン悶える花瀬の姿が捏造再生された。途端に、さっき少し落ち着かせた筈のムスコが痛いくらいに張り詰める。なんでコイツはこういう事をサラッと口にするんだろうか。抱かれたいとか言いながら、まさか無様な暴発を誘ってるんじゃないだろうな。
しかし、人形のような表情に不似合いな、熱っぽく潤んだ瞳で俺を見つめてくる花瀬にそんな思惑があるとは思えない。今日、話してみて感じたのだが、花瀬という男には、変に無垢なところがある。冷めた雰囲気や落ち着いた話し口調に目隠しされて、あまり気づく人間は居そうにないが。
人と連まず、掴み所の無いこの後輩のそんな部分を知っているのは、おそらく俺だけではないだろうか。そう思うと、妙な優越感が込み上げて来た。
開きっぱなしの花瀬の股間に視線を落とす。花瀬のペニスは、半勃ちになっていた。平凡な見た目を裏切らない、細身でやや長めの性器。今どき童貞だってこの歳になれば、色素沈着だのでもう少しグロい色になっていそうなものを、子供みたいに綺麗なピンク。その所為なのか、思っていたより拒否感や違和感は薄い。
俺はそのピンクに手を伸ばし、優しく握り込んだ。
「先輩、僕のは別に...あっ...」
花瀬は止めようと手を伸ばして来たが、俺はそれをやんわり払って言う。
「好きにして良いんだろ?」
「...はい、でも...んぅ...」
握り込んだままゆっくり動かすと、青白かった顔に朱が走る。そのまま扱きながらチュッとキスをすると、諦めたように目を閉じた。感じているのか、眉根が寄って呼吸が乱れている。
「なら好きにさせろよ。忘れられない処女喪失にしてやるからさ」
「...は、い...」
「声も、我慢しないで出せ」
花瀬は従順に頷き、俺の手淫に全身を震わせながら乱れた。
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