1、朝日が差し込む風景

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1、朝日が差し込む風景

 私は、ひとりぼっちだった。自分がいる場所の正体もわからなかった。 でも、私の目の前の風景は、私の気持ち(こころ)など、お構いなしに陽の光に輝いていた。 私の席から見えるところに目立つ集団がいた。 場を仕切るのは1人の中年男。2人の若い男、3人の10代の女の子。女の中のコトノという名前の女がスマホをいじっていた。 コトノは長い髪で朝っぱらからゴスロリでキメていた。もちろんメイクもバッチリだ。  私は、ぼんやりとそいつらをみていた。今日は2日目。朝食をこんな掃き溜めで取るのは生まれて初めてだ。   私は、昨日の夕方、診察中に医師から捕獲され、精神科急性期病棟に保護入院になったのだ。病棟に連行されて、持ち物は全部取り上げられて、着の身着のままで此処に放り込まれた。時間が遅かったこともあり、夕食はナースステーションで1人で食べた。 昨日は、私の誕生日だった。閉鎖病棟に放り込まれるのがプレゼントだったとは……笑いながら涙が出た。
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