2、コトノ

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2、コトノ

 コトノはあと数日で20歳になるのだと言う。 朝、私が見てた6人グループのうち大人は喫煙者だった。コトノは、それにくっついて喫煙室に来ていた。 私も喫煙者で1時間に1本と制限をかけられていたタバコを吸いに喫煙室に行っていた。喫煙者同士は喫煙所で仲良くなる。  コトノはフレンドリーだ。 「ねぇねぇ、お姉さん、コトノね。もうすぐ20歳になるの。そうしたら生活保護を受けて退院なんだよ」    この言葉に私は正直言ってムカついた。1日も働いたこともないのに生活保護貰うのが人生設計なのか……コトノは発達障害だった。コトノは中学も碌に行っていない。「私は頭がいいんだよ」が口癖だった。そういうことを平気で言うからイジメのターゲットになる。彼女の言い分と事実は違う。高校も行っていない。知識欲が強いわけじゃない。  コトノの入院のきっかけは母親との喧嘩だ。喧嘩じゃない「母親への一方的な暴力」だった。 面会に来た母親に暴言を言い、ものを投げつけるなんて日常茶飯事だった。 如何に、自分が傷ついてきたか、リスカやアムカの傷を見せて説明してくれた。明らかに嘘とわかるイジメの話もしてくれた。 自分がしている話の矛盾にも気がつかない。お世辞にも利口とは言えないオツムの持ち主んだった。 ぽっちゃりといえば聞こえがいいが、小太りの若いだけが取り柄の女、それがコトノだった。
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