3、認知の歪み

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3、認知の歪み

 ある日、私はコトノから相談された。 年上の男性患者から好かれて困っているという内容だった。コトノは病棟の中でも若さだけはダントツだったので、あり得ない話ではない。でも、その男性は退院間近で周りから距離をとっているような人だ。挨拶には答える。その程度のコミュニケーションしか持たない。 明らかに、自分はこんな掃き溜めにいる人間じゃないと思うくらいはマトモな人だ。 私は、コトノの話だけ聞いてスルーしていた。 案の定、2、3日後にコトノは、その男性に一方的に告って玉砕。 「バカにされた」とコトノは怒り心頭になっていた。  はっきり言おう。出会いの場が閉鎖病棟でなくてもコトノとその男性は釣り合わない。社会的なスペックが違いすぎる。病気なだけで社会人として成り立っている男は、掃き溜めにいる女なんか、若いだけでは相手にしない。それも分からない。  若いということは女に認知の歪みと言ってもいい「勘違い」を起こさせる。残酷な話だ。
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