4人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
電話で「脱けたい」とそいつが言ってきた。
出向いたら、何やら具合悪いらしく、そいつは寝込んでいた。
問いただしたら、どうやら、そのギタリストと何かあったらしい。
そして、その「何か」にとても怒っているくせに、それでもそのギタリストが好きなのだ、とそいつは言った。
その「何か」を理解した時に、俺の中の何かが切れた。
俺はそいつの声が好きだ、と思っていた。
その声と、歌と、コトバが好きだ、と思っていた。
だから、そんなものを生み出す、ヴォーカリストとしてのそいつが好きなのだ、と。
だからずっとやってきたのだ。
それだけだと思っていた。
ところが、その「何か」を理解した時、どうやら自分のその思いこみは違っていたことに気付いた。
その「何か」のせいで、具合が悪くて寝込んでいる奴を見ながら、話を聞きながら、自分もそれを、何処かで望んでいると。
気付いた時、俺は思わず目眩がした。
自分がそんなこと考えていたなんて。
最初のコメントを投稿しよう!