ウォーターカラー

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 電話で「脱けたい」とそいつが言ってきた。  出向いたら、何やら具合悪いらしく、そいつは寝込んでいた。  問いただしたら、どうやら、そのギタリストと何かあったらしい。  そして、その「何か」にとても怒っているくせに、それでもそのギタリストが好きなのだ、とそいつは言った。  その「何か」を理解した時に、俺の中の何かが切れた。  俺はそいつの声が好きだ、と思っていた。  その声と、歌と、コトバが好きだ、と思っていた。  だから、そんなものを生み出す、ヴォーカリストとしてのそいつが好きなのだ、と。  だからずっとやってきたのだ。  それだけだと思っていた。  ところが、その「何か」を理解した時、どうやら自分のその思いこみは違っていたことに気付いた。  その「何か」のせいで、具合が悪くて寝込んでいる奴を見ながら、話を聞きながら、自分もそれを、何処かで望んでいると。  気付いた時、俺は思わず目眩がした。  自分がそんなこと考えていたなんて。
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