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とどめが、その新しいメンバーになったバンドのライヴを見てしまったことだ。
さすがにまだ、合わせても上手く演奏としてまとまっている訳じゃあない。
そりゃそうだ、短い期間でまとまるとは思えない。
だがそれでも、何か違うのだ。
曲はそのバンド前のヴォーカルが居た時のものが大半だったが、一つだけうちのバンドの曲だったものが演奏されていた。
その曲は俺の書いたものではない。
ヴォーカルの奴が書いたものだった。
ところがその曲のアレンジはまるで変わっていた。
楽器が特にできる訳ではないそいつは、メロディラインしか作っていない。
そのメロディを聞いて、俺は何やらさわやかな曲だな、と解釈してアレンジをした。
なのにその時、ステージで演奏されていたのは、予想しなかった程の轟音で、ひどく凶暴なもの。
しかもそれが、不思議な程に似合っていた。
同時に、その歌い方も。
俺の知る限り、こんな歌い方をそいつはしたことは無かった。
攻撃的だ、とは思ったことがある。
決して大人しくはない。
だけど前のバンドの時には、そこまで切れた歌い方をしたことはなかった。
曲が呼んでいるんだろうか?
曲と、その曲を奏でるギターが。
だとしたら、結局俺のしてきたことは、奴の素質を開かせることはできなかったということなのか。
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