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「いい加減にしろよ? 風邪ひくぞ」
ゆっくりと俺は、テトラボッドに近づいていく。
ちょん、とその上に座ったモリエは、それでもやはり大きな目をじっと遠くに向けているだけだった。
雨の日の海は、水平線も見えず、空との境界が何処にあるのかも知れない。
そんなもの見ていて何が楽しいのだか俺には判らない。
いや、そもそもこいつの考えていることが判った試しはない。
居る場所の予想とかは立てられるが、その場所へ行く理由はさっぱり判らない。
と、ふいに奴は右手の人差し指を空に向けた。
その先には、他よりはやや白い空があった。
その唇が、微かに動いている。
ああこいつ、今頭の中に音符を散らしているな。
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