ウォーターカラー

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***  中学の時のブラスバンド部の後輩は、高校を卒業する直前に、俺にやっぱりこうやっていきなり電話してきた。  俺は驚いた。  驚いたなんてものじゃない。  高校卒業と同時に家を飛び出た俺は、一年後のその時、あるライヴハウスでギターを弾いていた。  今出演中だ、と断る馴染みのハコのマスターは、それから俺達の演奏が終わるまで、十五回電話を受けたという。  モリエの声が電話の向こう側からした時、俺は心底驚いた。  俺は当時、昔の知り合いには一切住所も電話も教えていなかった。  無論モリエにも、だ。  なのに何故。  それも俺の住処ではなく、出演中のライヴハウスに焦点を絞って。  考えられることは幾つかある。  高校には、何処か生活能力が欠けているような奴をフォローしてくれる心優しい人々が多かったのだ。  そいつらは時々下心もかいま見せたが、当の本人がそれに一切関知しないので、何事も起こってはいないようだったが。  電話の向こう側のモリエは、俺にこう訊ねた。 『曲作ったんだけど、どーしたらこれ、仕事にできる?』
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