ウォーターカラー

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 奴がその時、クラシックの解釈とか表現とか、そういうことを無視していたとは思えない。  それなりにコンクールにも出ていたし、またその中でそれなりの成績も残していたから。  だからたぶん、曲を作りだしたのはその頃からだ。  高校は分かれたから、一体どれだけの曲を作っていたのか、俺には判るすべもないが、こののほほんは、のほほんとしている時に頭の中に音符を飛ばしているらしく、その作業は、俺や周囲の奴が予想できない程、手早かったりする。  そんな風にして貯めた曲がたくさんあるから、それを何処かに送ったら仕事になるかも、と思ったのだろう。  俺は、だったら色んなレーベルに送ったらどうだ、と冗談半分に返して電話を切った。  実際それは間違った方法ではないし、それにその時は、当時のメンバーと終演後呑みに行くのを楽しみにしていたのだ。  答えがおざなりになってしまったのは仕方あるまい。
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