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ようやく回りだした頭は、奴のコトバをこう解釈していた。
つまり、長い間作曲家としてずっと裏方に回っていたモリエを、そのルックスの良さやら何やらで、表舞台に引っぱり出そうという計画が進んでいる。
だけどモリエは自分一人では嫌だから、その計画は誰かと組みたい。
つまりはユニットの様なものか?
そして奴が白羽の矢を立てたのが、俺、と。
「何言ってんの、ミナトはやるんだよ」
「お前そんな勝手に」
「だって、俺の曲は、ミナトのギターでできてるんだもの」
う。
心臓に、直撃をくらった気分だった。
「今まで俺の曲を散々犯しておいて何いってんの」
「ひ、人聞きの悪い」
「責任とってよね」
奴はそう言って、ぽん、とさしていた傘を浜に放り投げた。
くるくるくる、と傘は濡れて硬くなった砂浜の上を転がる。
そして奴は俺の前につかつかと歩み寄ると、その手の傘も、取り上げた。
「他に誰が居るっていうの」
くす、と奴は笑う。
傘がまた、転がる。
目をとられた隙に、奴は俺の首に手を伸ばした。
「俺はミナトよりミナトのギターのいいとこ知ってるよ。だから観念して、俺のものになってよ」
薄く笑う奴はそう言って、背伸びをして、力を込めた。
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