ウォーターカラー

25/27

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
 ようやく回りだした頭は、奴のコトバをこう解釈していた。  つまり、長い間作曲家としてずっと裏方に回っていたモリエを、そのルックスの良さやら何やらで、表舞台に引っぱり出そうという計画が進んでいる。  だけどモリエは自分一人では嫌だから、その計画は誰かと組みたい。  つまりはユニットの様なものか?   そして奴が白羽の矢を立てたのが、俺、と。 「何言ってんの、ミナトはやるんだよ」 「お前そんな勝手に」 「だって、俺の曲は、ミナトのギターでできてるんだもの」  う。  心臓に、直撃をくらった気分だった。 「今まで俺の曲を散々犯しておいて何いってんの」 「ひ、人聞きの悪い」 「責任とってよね」  奴はそう言って、ぽん、とさしていた傘を浜に放り投げた。  くるくるくる、と傘は濡れて硬くなった砂浜の上を転がる。  そして奴は俺の前につかつかと歩み寄ると、その手の傘も、取り上げた。 「他に誰が居るっていうの」  くす、と奴は笑う。  傘がまた、転がる。  目をとられた隙に、奴は俺の首に手を伸ばした。 「俺はミナトよりミナトのギターのいいとこ知ってるよ。だから観念して、俺のものになってよ」  薄く笑う奴はそう言って、背伸びをして、力を込めた。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加