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ビクッと体を震わせる木下の姿に、僕は反射的に立ち上がりそうになったが……ナオは拳をくるりと上下反転させる。
そうして指を開くと、手のひらの上には今僕達がハマっているアニメのキャラクターのキーホルダーがのっていた。
「オタクくんってこういうのが好きなんだろ? さっきコンビニでジュース買ったらオマケでついてきたからやるよ。おれが持ってても仕方ないし」
「え? あ、その……」
そのキャラクターは木下の推しであり、木下はもう当然GETしている。だがまぁ、ここは申し訳ないがナオを立ててもらおう。
「木下、貰っておけば?」
「う、うん。藤浪くん、ありがとう」
木下はキーホルダーを受け取るとぎこちない笑みを浮かべる。ナオはにんまりと満足そうな表情を浮かべ、何事もなかったように陽キャ集団の元へと戻って馬鹿騒ぎを始めた。
「お、驚いたのですぞ。まさか藤浪氏から10000年に一度の美少女バーチャルアイドル・アインちゃんのグッズを貰うとは……ある意味家宝ものですな、木下氏」
「う、うん……びっくりしたよ。……はっ! もしかしてあれが噂のオタクに優しいギャルでは??」
ナオの突然の奇行を安藤と木下は好意的に受け取ってくれている様だ。関わるなといったが、こういう形ならまぁ大丈夫……なのか?
そうしているとチャイムが鳴り、担任がやって来て朝のHRが始まる。ふとナオの方を見ると、ナオも僕のことを見ていて小さく微笑み合う。
誰にも言えない秘密の関係、そんな僕らの1日がまたこうして始まる。
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