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陽キャと陰キャ
昼休み、教室で友人達と弁当を食べているとお昼の校内放送が始まった。
スピーカーから流れ始めた音楽は、今期最も熱い深夜アニメのオープニングテーマ曲で僕達は思わず顔を見合わせた。
「今期覇権確定アニメの神オープニングktkr!」
「この選曲をしたのは我々の同志とみた!」
興奮気味の安藤と木下に僕もテンションを上げて言う。
「この曲の歌詞、作品への解像度と解釈レベルがマジ高過ぎん?? 作品ファンとして作詞家に負けた!」
「それな、伊調氏の言う通り!」
それからアニメや漫画などのオタクトークで盛り上がっていると、不意に「おい」と声をかけられる。
三人揃って声のした方を見ると、苛ついた表情で仁王立ちして、僕らを睨みつける藤浪の姿が直ぐ近くにあった。
「オタクがギャーギャーうっせーんだよ。てかまじオタクに人権とかないから、黙って飯食ってろ。キモいんだよ」
藤浪がそう吐き捨てると、安藤と木下は俯いて「ご、ごめん」と小さく謝る。
藤浪はこのクラスのカースト上位男子で、金髪にピアスという派手な格好をした所謂“陽キャ”だ。僕みたいな黒髪眼鏡のアニメオタクの“陰キャ”とは相容れない存在だ。
……しかし、だ。
「大きな声で喋ってたのは悪かったよ。でもだからって人権ないとかキモいとか、そういうことまで言われる筋合いはないな。うるさいって言うなら、藤浪くん達の方が授業中もうるさくてよっぽど迷惑じゃないか」
僕がそう言うと、藤浪は驚いたように目を大きくする。同時にくすくすと教室内に笑いのさざ波が起こった。
藤浪は顔を真っ赤にして何かを言おうと口を開いたが……。
「藤浪、オタクくんなんかほっとけよ。キモいのがうつるぞ」
「藤浪〜、戻ってこーい」
陽キャ仲間の渋谷と井田にそう言われ、
「あー、まじオタクでキモかった〜」
藤浪はそんな捨てセリフを残し、仲間の元へと戻って行った。
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