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藤浪が去った後、安藤が小さな声で言う。
「助かりましたぞ、伊調氏。陽キャに対して毅然と振る舞えるだなんて、伊調氏は我々陰の者の救世主ですな」
「いや、救世主って……。僕には皆を救えるチート能力なんかないから大袈裟に言うのはやめれ」
そう言って笑った僕の横で木下は暗い顔をして呟く。
「で、でもこれで藤浪くん達に目をつけられて、い、いじめられたらどうしよう、なんて、」
木下のそれに僕はきょとんとして首を傾げる。だけど直ぐにハッと我に返って言う。
「大丈夫だよ。あいつら1年の時から素行は悪いけど、いじめをしてるだなんて噂は聞いたことないだろ」
「う、うん……そう、だね」
どうにか安心させてやりたいのたが、木下は顔を青くしたままだ。よし、ならば仕方ない。
「まぁないとは思うけど、あいつらに何かされたら必ず僕に言ってくれ。必ずだ。僕がなんとかするからね」
言いつつ、背中を撫でてやると木下は少しだけ顔を綻ばせた。
「トゥンク! やだ、伊調氏イケメン! こんなん惚れてまうやろー! 抱いて〜♡」
「……、ちょっ、急なBL展開! 置いてけぼりにするのやめてもろて!」
安藤のおちゃらけに木下も冗談で返す。どうやら安心してくれたようだ。
ほっと息をついたその時、突き刺さるような視線を感じる。その視線の送り主はまぁ予想出来るのでそちらを見てみると、藤浪が鬼の形相で僕らに鋭い眼差しを向けていた。
……はぁ、やれやれ。陽キャは陽キャらしく陽キャ同士でつるんで、僕ら陰キャに関わらないでほしいものだ。それが平和な学校生活というものだろう?
窓の外、青空に浮かぶ白い雲を眺めて僕はため息をついた。
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