幼馴染

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 藤浪──ナオの言葉を無視して僕は通学鞄を机の上に置き、黙々と着替え始める。 「スグ?」  僕の様子がおかしいことに気がついたナオが漫画から目を離してこちらを見るが、それでも返事をしてやらない。 「…………え、なんか怒ってんの? なんでなんで?? おれ、なんかスグを怒らせるよーなことした?」  ベッドから飛び降りたナオは僕に抱きつくと、うるうるとした目で見下ろしてくる。 「スグ〜、無視しないで〜。スグに無視されたら寂しくて死んじゃうよ〜」  今度はそんな泣き言を言って僕の頭に頬ずりしてきたので、盛大に舌打ちをしてやった。 「チッ!」  キレがあり、よく響いたそれを聞いてナオは僕から飛び退く。そして青い顔をしてその場で正座をする。  混乱して口をパクパクしているナオに、僕は呆れながら言う。 「なんか怒ってんの? じゃねーだろ。僕が怒ってる原因に心当たりがないなんて言わせないぞ。その軽い頭でよく考えろよ」  するとナオはうんうんと唸って考え始めるのだが……。 「え、全くわかんない。おれの何が悪いか教えてスグ〜、理解してちゃんと謝りたいよ〜。スグに嫌われたくない〜」  めそめそとするその姿を見ていると、怒りも霧散して何もかもどーでもよくなる。はぁ、と息をついてから僕はヒントを与えることにする。 「昼休み、なんだったんだよアレは」  ナオは、あっ! と何かを思い出したような表情をした。そして気まずげに視線をうろうろと動かした後、急にキッと顔を引き締めたかと思うと……。 「だってだって、おれのスグが他のヤツと仲良くしてるのが嫌だったんだもん!」  そう言ってぷぅと片頬を膨らませたので、僕は何度目かのため息をついた。
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