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ナオは僕をジトーっと嫌な目つきで睨みながら言う。
「別に陽キャと関わっててもオタク出来るっしょ。それに渋谷や井田だってオタクっぽいとこあるよ、漫画とか普通に読んでる!」
「ほぉ。ちなみになんて漫画だ?」
「えっと、“鬼伐の剣”とか“TWO PIECE”とか!」
ドヤ顔で超人気作品のタイトルを口にするナオに、僕はやれやれと頭を左右に振る。そして。
「そんな国民的アニメでオタクを名乗るんじゃねぇえぇえぇえぇえっ!!」
「ひえ〜!」
一喝してやるとナオは両手で頭を押さえてしゃがみ込む。
「オタクと非オタが分かり合えないことがこれでよーく分かっただろ? だからもう学校では僕に関わるな、木下なんてビビリまくってるしな」
「ビビリまくる? なんで?」
きょとんとするナオ。本当にこいつは想像力が足りないな……。
「陰キャにとって陽キャは恐怖の対象でしかない。そして陽キャにとって陰キャは目障りな存在。……だから互いに距離をおいた方がいいんだ」
「いや、目障りなんて思ってないんだけど?」
「お前はな。渋谷は井田はどうだ?」
ナオは心当たりがあるのか「……あ、あっはは〜」なんて曖昧に笑っている。
「僕達が学校で親しくすると、俺は友達である安藤と木下を失う。そしてお前は渋谷と井田を失う。……それでいいのか?」
「それは、嫌だ。スグのことは一番大好きだけど、渋谷達と一緒にいる時も楽しいもん」
……こいつ、人には自分とだけ仲良くしろと言いながら、自分は渋谷達とは今まで通りツルむつもりだったのか。へー、ふーん、ほーん。……なんかムカつくな。
「……それじゃあ話はここまでだ。明日からは僕達に話しかけてこないでくれよ」
ナオは少し考える素振りを見せた後、コクリと素直に頷いた──かと思ったら。
「なぁ、スグ……」
ナオは両頬を真っ赤にし、涙でうるうると潤んだ瞳で僕を見上げる。
「スグはさ、おれが渋谷達と仲良くしてるの見ても嫉妬とかせんの?」
その問いかけに、僕はごくりと唾を飲んだ。
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