終わりに

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終わりに

 それから辺り一帯を捜索したが、彼女は出てこなかった。現地警察にも通報し、大学の留学センターにもかけあったが、答えは一つだった。 「そんな人は知らない。」  翌日、留学先の教室で彼女のことを聞いたが、同級生の返事は決まって同じだった。 「君みたいな変わった目の色の東洋人と一緒に留学に来てるなら、ソイツも覚えてるに決まってるじゃないか。」  アルビノ。生まれたときから瞳の色が極端に薄いことで、散々気味悪がられたり、標本を覗き込まれるような人生だった。その人生を、私はすでに受け入れたつもりだったのに、彼女のその言葉に少なからず黒いヘドロのような気持ちが湧き上がったのは事実だった。しかし、それでも彼女がいなくなってほしいなんて思ってなかったし、彼女の温もりやあの眩しい笑顔は消えることなく、忘れることなく私の胸にまだ焼き付いている。  それなのに、彼女の名前がもう、思い出せない。
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