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「遅くなったが、転校生を紹介する」 午後の授業が始まる直前、担任に紹介されて教室に入って来たのは、先程校舎裏で会った彼だった 淡い亜麻色のショートヘアーに切長の目、男でも見惚れるくらい甘い笑顔の似合うイケメン あぁ…ああいうのがαなんだと、クラスの皆んなが納得していた 女子は当然のように騒めいてたし、男子もなんか浮き足だってる ただ、僕だけが一人居心地悪くて、見つからないように前の席の人に隠れるように縮こまっていた 昼休みに顔を見られたかもしれないから… 喋ってるところを、見られてしまったかもしれないから… 「速水(はやみ) (りん)です。手続きに手間取っちゃってこんな時間になっちゃいました。よろしくお願いします」 人懐っこそうな笑顔と喋り方にすぐにクラスのみんなに馴染む彼を、教室の端でこっそりと見る 僕とは全然違う人種の人 誰からも好かれて、誰もが憧れる人… 僕には、関係のない人 関わりたくないから、見つからないように教科書で顔を隠しているのに何故かバッチリ目が合ってしまい、飼い主でも見つけた犬のように満面の笑みでヒラヒラと手を振ってくる 僕は慌てて顔を隠すように俯いたけど、遅かった 担任の先生ともバッチリ目が合ってしまって、コイツでいいかって面倒な事を押し付けてくる 「あ~、(おおとり)いつの間に顔見知りになったんだ?まぁいいだろ。席はアイツの隣が空いているな。オイ、(おおとり)、ちゃんと案内とかしてやってくれよ」 注目されたくないのに、彼が手を振ってきたせいで視線を集めてしまった 仲良くなりたそうだったクラスの女子からブーイングが上がるも、担任は面倒ごとには関わりたく無いのか、サッサと教室を出て行った 謎のイケメンくん、基、速水(はやみ)君も気にした様子など一切なく、僕の隣の空席に座り嬉しそうな笑みを浮かべている 「さっきはお昼邪魔してごめんね。クラス一緒だったのはラッキーだったなぁ~」 どこか嬉しそうに話し掛けてくれるけど、僕にとってはラッキーなんかじゃない むしろ、何で一緒のクラスになったんだと苦痛でしかなかった こんな偶然無くていいのに… 午後からの授業は、本当に苦痛で… まだ教科書も揃っていないという彼にノートや教科書を見せるハメになった チラチラと彼が気になるのか、クラスの女子がこっちを見て来る 僕のコトを見てるわけじゃないのに、視線が気持ち悪い 彼が人懐っこく僕に話し掛けてくるから、嫉妬や羨望の眼差しを受ける羽目になった 授業に集中したいのに、時々触れる手や肩が怖くて仕方ない 彼と周りの視線が気になってしまい、午後から授業はいつも以上に気疲れしてしまった 「ごめんね。明日には揃うはずだから、今日だけ」 彼が申し訳なさそうに謝ってくるから仕方ないけれど、僕にとっては本当に苦痛で… ただ、早くこの授業が終わって欲しいって切に願うしか出来なかった
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