case2 仁科優太の場合

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case2 仁科優太の場合

僕はノートの内容に言葉を失った。 仁科優太は1歳の時に病が見つかり横浜市の小児難病に特化した病院で治療を受けているがその病は症例が少なく予後不良と言われている。 仁科優太の父親は息子の病気から逃げるように離婚。 (何これ…父親酷いな) 優太と姉は母親が引き取ったが優太の姉は母方の祖父母の家に預けられてそこから学校に通っている。 『…』 「その子供はすでに自分の死期を悟っている…こちらのミスなんだがな」 (どういう事?) 死神様の話だと彼と同じ病棟に入院している子供の所に死神様の部下(もちろん死神)が現れたが運悪く彼に姿を見られたそう。 死神が子供の病室のドアをすり抜け出ていくのを目撃しそれからすぐにその病室の子供が亡くなりそれで彼は悟った。 死神の姿が見えるイコール死期が近い…という事に。 (死神もヘマするんだな…僕の時もそうだし) 「彼を迎えに行くのは俺だ」 「どうする?この仕事受けるか?」 僕は頷き彼の元に向かった。 仁科優太の病状は思わしくなく母親は病院から少し離れたウイークリーマンションを契約し毎日面会のため通っている。 (仕方ないとはいえ娘の事は実家に任せきり) (少しは娘の事も気にかければいいのに) (父親は面会すらしない) 死神様の話だと妻や子供が大きな病気をして家族の助けが必要な時に逃げ出す男は「残念ながら存在する」あの世で軽蔑の対象になるとはいえなんだかなあ…。 それより優太くんが気持ちを届けたい相手は誰? 僕は彼がいる病室にたどり着いた。
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