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ゆり菜は東京都大田区にある母親の実家に住んでいる。
そこは大きなお寺と梅園が近くにあり祭りや年末年始・梅の時期以外は静かな場所だ。
(ゆり菜ちゃんは中学受験か)
(多感な時期に落ち着かないだろうな)
ゆり菜は塾での成績も優秀だ。そして祖父母と住んでいるためか?朝刊が届く時間には起きて机に向かっていた。
参考書を開くと後ろに人の気配。祖父母は部屋に入る時は必ずノックするしこの部屋は2階。古い家のため階段を上がる際はきしむ音がするがそれすらない。
ゆり菜は怖くなり振りかえると少し年上の男の子がいて思わず声が出そうだった。
すると部屋にある鏡が目に入る。
(え?この人鏡に写っていない)
(どういう事?)
『ゆり菜ちゃん突然驚かしてごめんね』
この家の表札にゆり菜の名前は出して無いから何故名前を知っているのか?不思議でたまらなかった。
『僕は肉体を持たないから鏡に姿は写らないんだ』
「お兄さんもしかして幽霊?」
『少し違うかな?僕は人生最後の言葉を届ける役目をしているんだ』
「最後?」
少年は鞄からノートを取り出し開いた。
『優太くんからお姉ちゃんにって言葉を預かっているんだ』
少年は優太からの言葉をゆり菜に伝えた。
「なんでなんで…優太は何も悪くない…」
「悪いのはお父さん」
ゆり菜は少年を見つめる。
「神様は平等じゃない!」
「平等ならお父さんに罰が当たるはず」
「おばちゃんが言ってた…あの男は逃げたって」
目には涙をためその表情は怒りに満ちていたがふと何か思いついたようだ。
「お兄ちゃん…生まれ変わりってあるの?」
『あるよ。そのためには1度あの世の住人になる必要があるって死神様が言っていた』
「それなら優太に伝えて欲しいの…具合悪くて親以外会えないって聞いたから」
『いいよ…優太くんには僕が伝えるよ』
「優太へ
今度はお姉ちゃんの子供に生まれ変わってね。
海に行ったり遊園地に行ったり。
優太が出来なかった楽しい事たくさんしようね」
するとノートが強く光りゆり菜だけでなく少年も驚きを隠せなかった。
(こんな強く光るのはじめてだ)
「お兄ちゃん…なんで光るの?」
『ゆり菜ちゃんの言葉を受け取ったからだよ』
『急いで優太くんに伝えるよ』
少年が霧のように消えゆり菜は言葉が出なかった。
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