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「それで、悲鳴を聞いて駆けつけたら、一ノ瀬さんは既に亡くなっていたのですな?」
「そうです」
四人を代表して刑事の言葉に応じたのは、三木だった。
「改めて説明しますと……」
夜中までトランプをしていたら、突然、悲鳴が聞こえてきた。
五人のうち四人が同席している以上、悲鳴の主は、先に寝たはずの一ノ瀬としか考えられない。
だから一ノ瀬の部屋へ急行したところ、包丁で刺されて絶命した一ノ瀬を発見したのだった。
「ずっと四人一緒でした、とは言いません。途中、トイレに立ったりしましたからね。でも少なくとも、悲鳴を聞いた瞬間は、みんなリビングにいたんですよ」
三木の言葉に、二人の女性が頷く。「しめしめ」と思いながら、七尾も首を縦に振った。
「ほう、アリバイの主張ですか。まあ、それは後で検討するとして……」
感心したように微笑みながら、刑事は、一枚の小さな紙片を取り出す。
「……これについては、どう思います? 現場に残されていた、いわばダイイングメッセージですな」
「ダイイングメッセージ……? ああ、死にゆく者が残される者たちに届けたいメッセージ、ってやつね」
「何カッコつけた言い方してんのよ。もっと単純に、よく推理小説で『死に際の伝言』と呼ばれるやつでしょう?」
女性二人の、茶々を入れるみたいな言葉は聞き流して、三木が刑事への対応を続ける。
「数字のようですね? 一ノ瀬は数学科だったことを誇ってる部分がありましたから、きっとそれで死の間際まで……」
彼の横から、七尾も覗き込むと……。
紙片に書かれているのは『10101』だった。
「一万百一……」
素直に読んだ七尾の言葉に、三木が冗談じみた声で反応する。
「『一』は一ノ瀬、『万』は万田、『百』は百池かな?」
「ちょっと、三木くん! どういう意味? 私たちを告発したいのかしら?」
「いやいや、そうじゃない。ただ『三』が入ってないからホッとしただけだ」
口を尖らせる万田に対して、慌てて否定する三木。だが、これはこれで、あまり『否定』になっていないと七尾は思う。
しかも、万田は首を横に振っていた。
「いいえ、三木くん。『10101』を『1+0+1+0+1』と解釈すれば『三』になるでしょう?」
「おい、それはこじつけだろう?」
今度は冗談口調ではなく、本当に怒った様子の三木。
ここで仲裁に入るのは自分の役割ではないと自覚しつつ、つい調子に乗って、七尾は会話に割り込んだ。
「まあまあ二人とも、落ち着いて……。そうなると、安全なのは僕だけかな? どう解釈しても『10101』は『七』にならないしね」
「あら、確かに『七』とは違うけど……」
今度は百池が口を開いて、険しい表情で七尾を睨みつける。
「……21にはなるからね。21だって、七尾くんを意味する数字よね?」
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