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「海亀が喋った……?」
そう言ったきり、絶句して硬直する青年。
「はい、喋りますとも。私の言葉、間違ってませんよね? 正しく伝わってますよね?」
反射的に、青年は頷く。
「それは良かった。ファーストコンタクトがあれでしたから、任務失敗かと心配しましたよ。でも良かった、あなたみたいな人に出会えて。最初の人たちのことは忘れて、ファーストコンタクトのやり直しです」
まるで話好きの人間のように、海亀は饒舌だった。青年には海亀の表情なんて識別できないが、人間そっくりの笑顔を浮かべているように感じられた。
「とりあえず、あなたを御主人様のところへ連れて行きたいのですが……。お時間あります?」
海亀に質問されて、ようやく青年は言葉を取り戻す。
「助けた亀に連れられて竜宮城へ、ってことか? おいおい、浦島太郎かよ……」
口から飛び出したのは素直な感想であり、海亀への返事とは別物だった。
それは海亀にも伝わったらしく、顔をしかめながら、ひょいっとヒレを伸ばす。
「ちょいと失礼。直接、頭の中を覗かせてもらいます」
タッチするだけで心が読める、という態度だった。青年の体に触れた海亀は、思案げな声を出す。
「ふむ。浦島太郎の昔話ですか……。私がこの姿になったのは、単なる偶然です。最初に目にした現地生物の姿になる、というルールに則っただけですが、むしろ都合が良かったみたいですね」
海亀はニヤリと笑いながら、海の方を指し示した。
「では、あなたの言うところの『竜宮城』へお連れしましょう。ただし私の背中ではなく、これに乗って」
海亀の発言と同時に、水の中からザバーッと現れたのは、直径数メートルの銀色の円盤。いわゆるUFOだった。
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