SF浦島太郎

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    「歓迎の準備があるので、少しお待ちください」  海亀は青年一人を残して、先に宇宙船の外へ出ていく。  入り口の扉もすぐに閉じてしまったので、外の様子は青年には見えなかった。だからといって、うかつにパネルに触れると何が起こるかわからないので、とにかく大人しく待つしかなかった。  体感時間としては十数分が経った頃、扉が開いて、再び海亀が入ってくる。 「どうぞ、こちらへ」  案内されるがまま、宇宙船の外へ出てみると……。  目の前に広がるのは、信じられない光景だった。  宇宙船で来たのだから、ここは別の惑星のはず。だが、とてもそうは見えなかったのだ。  頭上に広がるのは、濃い青色。空というより、深い海のような青さであり、まるで海の底にいるみたいな気分になる。  前方に見えるのは、きらびやかな宮殿。その形状は、まさに青年がイメージする『竜宮城』そのものだった。  青年を出迎える異星の者たちも、地球の魚を思わせる姿だ。それらが、まるで海中を泳ぐかのように、宙を漂っているのだった。 「ははは……。タイやヒラメが舞い踊り、ってやつか?」  乾いた笑いが浮かぶ青年の前に、地球人そっくりの異星人が現れる。  稚児髷(ちごわげ)のような、二つの輪っか状に束ねた特徴的なヘアースタイル。ひらひらした薄い布地の着物を纏った、絶世の美女だった。  男性の心を蕩けさすような笑みを浮かべて、彼女は彼に告げる。 「ようこそ、おいでくださいました。私が、この件の責任者……。そうですね、乙姫とお呼びください」    
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