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続・猫様02 天敵現る
今回の猫様龍二には、厄介な天敵がいた。
それは…。
「ちー」
この声の主。
齢3歳になる、千鶴と龍二の息子、龍希だ。
今年から園に通いはじめ、ヤンチャの上に更にヤンチャを重ね、
今日も元気に屋敷の若い衆を翻弄し、彼等の体力をことごとく削り、
それでも有り余る体力で、屋敷の廊下を駆け抜けてきた。
「はーい。龍希、こっちだよ」
千鶴が呼ぶと、視線の先の廊下の角から、小さな龍希が飛び出してきた。
「ちー、いたーっ」
ぱたぱたと、勢いよく走ってくる龍希に、
「龍希、転ばないようにゆっくりおいで」
「あー、ねこたん!!」
千鶴の足元にいる龍二に、照準をロックオンした龍希は、
千鶴の広げた両手を避け、黒猫龍二に飛びついた。
「ニ゛ャァァアァッッ(ぐわぁぁぁっ)」
「ねっこたーーーん!!!」
ミシミシと、骨が軋むほど抱き潰される。
「ああっ、だめよ!龍希っ、ねこたんは優しく抱っこしてあげなきゃ!!」
「やーっ、やさしくしてるっ」
してると言いながら、更に腕に力が入り、本気で骨が折れそうになる。
「クワゥ゛ゥ゛ッッ(龍希、とりあえず離せっ)」
龍二は、身体を捩り、片手を抜き出すと、
爪を立てない猫パンチを、龍希の眉間にお見舞する。
ペチペチ…ッとヒットする高速猫パンチで、ようやく龍希から解放された。
「いたいっ、ちー、ねこたんがぶったーっ」
「龍希、ねこたんも痛い痛いって」
千鶴は、龍二を抱えると、そっと身体を撫でてやる。
「龍希も、なでなで好きでしょ?ねこたんも、なでなで好きなんだよ?」
そうやって千鶴が龍二を労っていると、
今度は、龍希が猫様龍二に嫉妬を始める。
「やーっ!! ちーはぼくのーっ!! なでなでもぼくーっ!!」
言うが早いか、龍希は千鶴の膝の上にいる龍二を、両手で鷲掴みにすると、
廊下にぺっ、と投げ捨てた。
「…………」
廊下に着地し、千鶴の方へ振り向くと、
龍希がドヤ顔で、龍二を見下ろしていた。
先程まで龍二がいた千鶴の懐は、龍希に奪われて、
龍希は、ギューッと千鶴のエプロンを握りしめ、
「べーっ」
猫様龍二に舌を出し、可愛い威嚇をしていた。
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