続・猫様03 天敵の天敵

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続・猫様03 天敵の天敵

 そんな無敵の龍希にも、天敵はいる。 「姐さん、大丈夫ですか?」  騒ぎを聞きつけ、千鶴付きの側近、  山本慎治(やまもとしんじ)がやって来る。 「すみません、慎治くん。龍希が猫に嫉妬してしまって…」  千鶴のそんな一言に、慎治が千鶴にしがみ付く龍希に、  しゃがみ込んで目線を合わせる。 「どうした龍希、今日は甘えたか?」 「…あまえてないっ」  ギューッと千鶴のエプロンを、さらに握り締める。 「今日は部屋に来ないのか?」 「いかないっ。きょうはちーといるっ」  そんな龍希に、慎治は心底残念そうに呟く。 「そうか…残念だなぁ。せっかく龍希の為に調達してきたのに…」  そう言って慎治が、とあるゲームソフトのパッケージを龍希に見せる。  すると、ぐずりそうだった龍希の表情がぱっと明るくなった。 「あー、ま〇んくら〇とだっ!!」 「そうだけど、龍希はちーといたいんだろ?じゃあこれ、いらんだろう?」 「いるよっ!! しんじっ」 「俺の部屋には行かないって言われたしなぁ」 「やーだっ!いくっ!! いくよ、しんじー」  慎治から散々焦らされて、龍希はあっさり千鶴から離れる。  そして今度は慎治の足元に纏わりつく。 「しんじー、はやくいこうー」 「分かった分かった。ちょっと待ってろ」  慎治は龍希の頭を優しく撫でながら、  千鶴にいつものように告げる。 「では、龍希は連れて行きます。後のことは、お任せください」 「すみません、慎治くん。お願いします」 「承知。よーし龍希、いくぞ」 「はーい」  ウキウキと、龍希が慎治と手を繋ぎ、慎治の部屋へと向かっていった。  龍希という名の台風が去り、屋敷の廊下が静寂に包まれる。 「リュウジ、大丈夫?」 「ニャー(大丈夫だ)」  千鶴は、龍二の頭から身体へ、優しくするりと撫でてやった。
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