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続・猫様06 天敵反省
龍二の叫び声に驚いた千鶴が、待たせていた入り口に目をやった。
すると、そこには龍希の姿。
そして、追いかけてきた慎治から逃げていく。
その手には、龍二の尻尾。そして、引き摺られる黒い身体。
「龍希!! その猫を離せ!! 引き摺るな!!」
「やーっ、ねこたんとおさんぽーっ!!」
そう言って、龍希は黒猫龍二を引き摺りながら走っていった。
「やだっ、ダメよ龍希!! ねこたん離してあげて!! ごめんなさい、みなさん龍希を捕まえて!!」
千鶴のひと言で、食堂にいた若い衆たちが一斉に散っていった。
結局、龍二は屋敷中を引き摺り回され、
慎治に捕まった龍希から、ようやく解放された。
一方、捕獲された龍希はというと、慎治から千鶴に引き渡され、
その千鶴から雷が落ち、しょぼくれていた。
「龍希、ねこたんはお話しできないの。だから、痛いって言えないの。龍希はあんな風に引き摺られたらどう思う?」
「………やだ」
「龍希が嫌なことは、ねこたんも嫌なの。龍希のように、お話しできないから、龍希が優しくしてあげないと」
「……………ごめんなさい」
瞳に涙を一杯溜めて、龍希がひと言絞り出す。
「ん。ねこたんにもごめんなさいは?」
「ねこたん、ごめんなさい」
龍二は、大丈夫を籠め、息子を労うように身体を擦り寄せた。
「ねこたん、許してくれたよ?良かったね?龍希」
「うん」
こくりと頷いて、龍二の前にしゃがみ込むと、
小さな手で優しく龍二の身体を撫でた。
龍希は、この日一日、黒猫龍二を離さなかった。
□◆□◆□◆□
夜、龍希は黒猫龍二を抱えたまま落ちた。
そんな龍二は、離してくれない龍希の懐に、甘んじて納まっていた。
「ごめんね?龍希が離そうとしなくて…」
「………ニャ(構わん)」
龍二は、龍希の顔に自分の頬を擦り寄せて、そのまま眠った。
そんな二人を、さらに千鶴が包み込む。
龍希は、千鶴と龍ニに挟まれる形になった。
愛しい千鶴の手が、二人をまとめて包み込む。
やはり可愛い息子の温もりを感じながら、
三人は、仲良く親子団子になって眠った。
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