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続・俺様03 二度あることは…?
龍希が猫たちに囲まれて、満面の笑みで戯れている。
そんな龍希を、千鶴は猫に怪我をさせたりしないか注視していた。
そこへ、施設長と言葉を交わしていた龍二が合流する。
「千鶴、大丈夫だ。龍希もちゃんと加減している」
「そうですけど、やっぱり見ておかないと…」
そんな千鶴を龍二は、そっとその肩を抱き、大丈夫だと摩った。
二人で龍希を見ていると、奥の部屋から施設長が龍希の為に『黒猫』を抱えて連れてきた。
「あー、くろねこたんだーっ」
「龍希くんが逢いたかった黒猫くんじゃないかもしれないけど。この子はとってもおじいちゃんだから、優しくしてあげてね?」
「あい。こんちは、ねこたん」
「ニャーッ」
龍希が黒猫に挨拶をすると、
優しい老猫は、龍希の挨拶に、元気にひと鳴き、挨拶を返してくれる。
龍希は、その老猫と不思議な会話を交わしながら、
猫との交流を存分に楽しんだ。
龍二と千鶴も、そんな猫たちの中で、夫婦の会話を交わす。
「しかし、一度ならず二度までも、猫絡みの夢を見るとはな…」
「でも、夢を見る度にこうして猫に触れあえるのも、良いものです」
「俺は堪ったもんじゃない…」
「ふふ…。龍二さん、あと一回…猫になるかもしれませんよ?」
少し、驚いた表情を見せる龍二に、千鶴がまた笑う。
「…………何故、そう思う?」
「だって…二度あることは三度…ですもの」
龍二は、心底嫌そうに頭を垂れ、それでも嬉しそうな千鶴に、
「だが…もしそうだとしても、次も千鶴が可愛い飼い主だ。なら、何度猫になろうと問題ない」
「なるほど…ものは考えようですね?じゃあ、あと一回は、龍二さんには猫なって貰わないと」
「俺は、千鶴がそうやって笑っていてくれるなら、何にでもなれるからな」
「それは、私も同じですよ?」
そんな二人の会話の中に、猫を抱えた龍希がやって来る。
「ちー、ねこたん、のびるー」
「龍希、可愛いけどねこたん、苦しそうだよ?おろしてあげて?」
千鶴に言われ、龍希が伸びた黒猫をそっと床に下ろす。
「ごめんね、ねこたん」
「ニャーッ」
黒の老猫は、龍希の何倍も生き、達観しているようで、
何でもないと言うように、またひと鳴き、龍希に返事を返した。
龍の家族は今日一日、沢山の猫たちに囲まれて過ごし、
そして優しい黒猫に、猫との付き合い方を学んだ龍希だった。
「ちー」
龍希から呼ばれ、千鶴が息子の側へ向かう。
たくさんの猫たちに囲まれて、いつものように可愛らしく笑う。
そんな千鶴たちを、壁に凭れかけて堪能する龍二のもとに、
さっきまで龍希と戯れていた黒猫が、たしたしとゆっくり近づいてきた。
「…………何だ、長老?」
龍二の問いに老猫は、何も言わず龍二の足元に、
擦り寄るように、並んで座った。
それが、もう一回猫になれ、と言われている気がして…。
龍二は、苦虫を噛み締めながら、
「…………………長老、二度と猫は、勘弁だ」
傍にやって来た老猫に、龍二は思わずぽつりと呟いていた。
- 終幕 -
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