娘と母

1/1
前へ
/3ページ
次へ

娘と母

「お母さん、小鳥が鳴いてるよ」  私が言うと、お母さんは、 「ええ、雨が上がったのね」  と答えた。 「ひどい暴風雨だったわ。でも、この人が死んで、嵐は去った。少しの間はすっきりしないけど、じきに暖かい晴れ間がくる」  お母さんは私の頭を撫でてくれた。 「ありがとう。美和はよく頑張った。安心してね。お母さんが必ず守るから」  私は遺体の側で赤く濡れている短冊を拾う。 「七夕のお願い事、なんて書けばいい?」  お母さんは少し考えて答えた。 「人生に涙の雨が降りませんように。  たとえ降ってもきれいに雨が上がりますように。  というお願い事でいいんじゃない?」 〜END〜
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加