8人が本棚に入れています
本棚に追加
露ほども見えていなかった彼女の本心。
いま届けたかったのだろうか。絋哉に。
──そうだよな。「届けたい」ならもっと勇気を出せばよかったんだ。俺も。
「待てよ、園部!」
一瞬の躊躇の末に美波を追い掛ける。
「えっと、俺、……全然気づかなくて──」
「ああ、通じたんだ。意外と鈍くないじゃん、桜木。──今無理に答え出さなくてもいいよ。友達だもんね」
彼女は笑みを浮かべて、紘哉の腕を軽く叩いて来た。
急かそうとはしないその態度に、正直なところ安堵する。
「ありがとう、園部。お前がいてくれて本当に良かった」
紘哉は心からの感謝を込めて告げた。
そのまま敢えて核心に触れない話をしながら、二人は大学最寄り駅前のショッピングビルへと向かう。
今はまだ、美波のことは友人だとしか思えなかった。けれど、決して嫌だとも迷惑だとも感じていないのも事実だ。
これからも互いに友人として支え合いながら、もしかしたらどこかで何かが変わる未来もあるのかもしれない。
~END~
最初のコメントを投稿しよう!