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「ねえ、桜木(さくらぎ)は!?」 「俺はゲーム。スマホゲーだな」  大学に入学してそろそろ二か月が経つ。  講義の後で教室に残った数人で話していて、とりとめない話題が趣味に移った。 「あ、あたしも同じ! 何が好き? 今何やってんの?」  答えた紘哉(こうや)に、普段からよく話す美波(みなみ)が食いついて来る。 「園部(そのべ)もそうなんだ。……俺が今ハマってんのは『ファンブレ』かな。お前は?」 「『ファンブレ』もやってるよ~。でもあたしは『スクナナ』が一番好きなの」 「それはよく知らねぇ。乙女ゲーだっけ?」 「桜木くんも美波ちゃんも何言ってんのか全然わかんない……」  盛り上がる二人に、戸惑うように零す杏理(あんり)。 「だよねー。杏理ちゃんゲームしなさそうだし。実は私もしないからわかんないんだ」  話の輪の中にいた麻由(まゆ)が同調している。 「そっか、そうだよね。ゴメンゴメン、つい夢中になっちゃって」 「謝ることじゃないよ。わかんないほうが変ってよく言われたから」  笑いながら軽く詫びる美波に、少し恐縮した様子の杏理が小声で告げた。 「いや、それおかしいでしょ。趣味なんて人それぞれだし、バカにするならともかく『わからない』のは何も悪くないよ。あたしだって、例えばスポーツ好きな人のことは物好きだな~くらいにしか思わないし」  友人の言葉に真剣な表情で美波が言葉を発した。 「……ありがとう。わたし小説好きなんだけど、中学や高校のときは『アタマ良いアピール?』とかって笑われたりしてたから。大学ってみんな優しくて嬉しい」 「これが普通だよ。そんな幼稚な奴らに囲まれて大変だったね、杏理」 「美波ちゃん……」  杏理は美波の言葉に僅かに目を潤ませている。
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