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「だから! 『面白いけど、時間なくてなかなか進まなくて』とかなんでもいいんだよ! 黙ったままじゃ、あんたが何考えてるかなんてあの子には伝わらないでしょ」 「あ、そっか。そう……」  まったく頭の片隅にもなかった発想だった。『杏理の本』に夢中で、他のことに意識が行く状態ではなかったのだ。 「先に言っとくけど、杏理が愚痴ったわけじゃないからね」  美波が前置きしながら話し始めた。 「こないだクラスの女子で話してるときに、麻由が『そういえばあの本どうなったの?』って言い出してさ」  絋哉からの感想を訊かれた杏理は、遠慮がちに「……ううん、なにも。やっぱり迷惑だったのかな。わたしつい本気にしちゃって、こういうのダメだよね」と自嘲していたという。  それに対して、麻由が我がことのように憤慨していたそうだ。  おそらく真人が聞いたという絋哉に関する話の主も、杏理本人ではなく麻由なのではないか、と感じた。  そうだとしても麻由に思うところなどはないのだが。 「あたしは中高が女子校の理系メインのコースで、三分の二は理系だったんだけど。あの子(杏理)は地方の共学公立で、理系クラスは女子二人だったんだってさ。あ、麻由もそこまで極端じゃないけど似たような状況だったらしいわ。だから余計に肩入れしちゃうのかもね」  唐突に切り出した彼女の話の行き着く先がまったく見えない。  確かに絋哉たちは理学部所属だが、それがどうかしたのか?
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