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「僕らはどこにいるんですか?」
「ここだよ。この町の中にいる」
「あの施設は?」
「載ってはいないけどこの辺りかな」
的確に指をさされ、点と点を視線で結ぶ。一つの町が、小さな点になってしまうのだ。恐らく、距離はあるのだろう。しかし、それでも短さに不安が煽られた。
「地図で見ると近そうだけど、実際は大分距離があるよ」
「そうなんですか……」
だが、アムルは読み取ったのだろう。自然とフォローを入れてきた。
指先が反対側へも線を引く。最終的に行き着いたのは、字も囲いもない白紙の上だった。施設と現在地の五倍はありそうだ。
「南へ進んだ先の、ここが海みたいだね」
「……遠いんですね」
「まぁなんとかなるよ」
ルートを確認しているのか、アムルは地図と睨みあう。僕も一緒に睨んでみたが、早々に離脱した。
ぼんやりと地図全体を見る。僕が知るのは、どこにあるかも分からない故郷と、地図にない施設だけだ。地図の上には、どれほどの未知が眠るのだろう。
「……世界って広いんですね」
「これは一部だけどね。あ、お腹空いただろう。パンを買ったんだった」
地図を広げたまま、アムルは鞄からパンを出した。白くふっくらと丸みある姿は、知っているものと全く違う。買っている時も、なんだろうと思っていた。
不思議そうに見つめる僕に、アムルはこれが本来の姿だよ、と笑った。
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