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「……なぜ、僕らは色が違うだけで迫害されるのでしょうか」
「おかしいよな」
「なぜ僕らは、生きることさえ制限されるのでしょうか」
「理不尽だよな」
「捕まって痛い思いをするか、あんな風に殴られて殺されるか、どっちが幸せなんでしょうか」
「どっちも幸せじゃないよ」
絡まった毛糸のような思考が、真っ直ぐな糸へと戻されていく。
決して、返答に納得したわけではない。しかし、外部に放つだけでも心に作用するようだ。こんな経験は、十七年生きてきて初めてだった。
永遠に解けないであろう疑問を、再び胸の深くに収納する。その際、一つの疑問が派生した。
「…………僕が施設で耐えてきた意味ってあったんでしょうか」
流暢だったやり取りが、急に速度を落とす。
アムルの横顔は、真剣さを上乗せしていた。困らせた自覚を持ちながらも、撤回の意思は芽生えなかった。
数秒後、静かで寂し気な声が落とされる。
「……ごめん、それは私にも分からない。実験そのものにはほとんど関わっていなかったからな。詳しいことはよく知らないんだ」
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