三つ目の町

2/11
前へ
/31ページ
次へ
「……なぜ、僕らは色が違うだけで迫害されるのでしょうか」 「おかしいよな」 「なぜ僕らは、生きることさえ制限されるのでしょうか」 「理不尽だよな」 「捕まって痛い思いをするか、あんな風に殴られて殺されるか、どっちが幸せなんでしょうか」 「どっちも幸せじゃないよ」  絡まった毛糸のような思考が、真っ直ぐな糸へと戻されていく。  決して、返答に納得したわけではない。しかし、外部に放つだけでも心に作用するようだ。こんな経験は、十七年生きてきて初めてだった。  永遠に解けないであろう疑問を、再び胸の深くに収納する。その際、一つの疑問が派生した。 「…………僕が施設で耐えてきた意味ってあったんでしょうか」  流暢だったやり取りが、急に速度を落とす。  アムルの横顔は、真剣さを上乗せしていた。困らせた自覚を持ちながらも、撤回の意思は芽生えなかった。  数秒後、静かで寂し気な声が落とされる。 「……ごめん、それは私にも分からない。実験そのものにはほとんど関わっていなかったからな。詳しいことはよく知らないんだ」
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加