三つ目の町

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 素直な答えに一瞬驚いた。アムルなら嘘でも優しさを練り上げると、勝手に思い込んでいたのかもしれない。  だが、本音は不思議と心地よさを運んできた。敢えて、無知を告げてくれたのが嬉しくさえあった。 「そう、ですよね。何言ってるんでしょう、僕。意味なんてあってもなくても同じなのに」  誠実な本音へ、誠実な見栄を送る。  発言に嘘はなかった。しかし、あの十年が無意味だったと認めるのは、きっと死んでも出来ないだろう。  「それでも、全ての事柄に意味があったと思いたいよな。折角だし、海と一緒に探してみようか?」  静かで穏やかな誘いは、僕の見栄を包んだ上で引っくり返した。  また読まれた――と思ったが、アムルが自らに聞かせている可能性を見出だす。  僕の十年――いや十七年も、あの女の子の人生も、たくさんの同志の人生にも、そしてアムルの人生にも意味があったと思えたなら。きっと僕は、穏やかな眠りにつけるだろう。  未来を眺めている自分に気付き、我に返った。  意味が見つかるとは思わない。先へ進むのはいつだって怖い。見えない悲劇に出会うことを恐れている。けれど。 「そう、ですね」  アムルが僕を引っ張ってくれる内は、戻るわけには行かないから。  帽子を深く被り直す。遺体はまだ網膜に張り付いている。疑問の一つも解けてはいない。 「もう大丈夫になりました。行きましょう、アムルさん」  僕が今すべきことは、恐れを蹴散らして進むことだけだ。
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