三つ目の町

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 たった一つ町を移動しただけ――そう思えないほど中央街は異世界だった。やはり髪や目の色は統一されているものの、服装が更に多様になっている。  初めて見るデザインや色の衣装が眩しかった。店の作りも前とは違い、開放された建物そのものが店として使用されていた。  文字らしきものの書かれた看板が、どういう法則か屋根にくっついている。 「ここは三つの町と繋がっている場所だからな。色々な人が集まるし発展も早いんだろう」  視線を撒き散らしていたのかもしれない。アムルは説明し僕に微笑んだ。それから一つの店を指し、帽子の新調を提案してくる。  この町で帽子はスタンダードアイテムらしく、品揃えは豊富に見えた。だが。 「要らないです」  即答する。金銭面に加え、選択に時間を用いるのは惜しい。そう考えたからだ。それから、もう一つ。 「……アムルさんの帽子、好きなので」  アムルがくれた帽子は、締め付けることなく、けれど上手い具合に髪を隠してくれた。  全幅の信頼までは置けないが、僕にとってはお守りのようなものでもある。  アムルは小さく驚き、苦笑った。建前だと受け取ったのかもしれない。 「欲しいものがあれば遠慮せず言ってくれてもいいんだよ」 「……もう十分頂いているので何も要らないです」 「そうか。世界を知るのは楽しいと思うけどなぁ」 「アムルさんこそ新しいの買って下さい。日光暑いですし」 「うーん、じゃあそうするかぁ」  僕に気を使わせまいとしてか、アムルは提案を受け入れた。  即座に選んだ帽子は、僕の頭のものとよく似ていた。彼にも個性があると知り、仄かに顔が緩んだ。
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