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5、24歳同窓会
社会人になって2年目が過ぎた頃、小学校時代の同窓会が開かれることになった。
さちと剛史が卒業した小学校は一学年2クラスしかなかった。同窓会というものは、人生がうまく行っている人しか出席できないものだ。
24歳の同窓会は、元同級生たちも社会人になったばかりで、どちらかというと合コンみたいな感じになった。
地味なブスだった筈のさちは、みんなが二度見するくらいの目立つ女性になっていた。
剛史は、グレていた頃の雰囲気は全く消えていた。
さちは、この集まりに辟易した。面白いかなと思って来た自分は馬鹿だったと思った。剛史を見たら未だドキンとするかもという興味があった。同窓会に来た理由は、それだけだった。
さちは、話しかけてくる元同級生が鬱陶しくて1人でホテルのロビーに出た。
「太田さん」
名前を呼ばれて振り返ると剛史がいた。
さちは、振り返って剛史の顔を見つめた。
「私の名前、知っていたんだ」
「知っていたよ。小学校の時は同じクラスだったじゃない」
「でも、私は居るんだか居ないんだか分からない子供だったじゃない?」
「でも、今は目立つ。とても綺麗になったね。大学の時は読モしていたでしょ」
「よく知ってるわね。女性誌なんか買ってたの?」
さちは、剛史をおちょくるように話した。
「あんな軽薄な真似はもうしないよ。大人だもの。私は堅実な大人になった。今は社労士の事務所で働いているの。剛史くんにはお礼を言わなければいけないのよ。私……」
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