5、24歳同窓会

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「剛史くんのことが、ずっと好きだった。そして、私は崩れた感じの男は子供の時から大嫌いなの。その両方の感情を1人の男性に抱いたことで、どんなにチヤホヤされても流されずに済んだ。調子に乗って読モなんかしてもブレない心が育ったわ。ありがとう」  剛史は、さちが何を言っているのか全く理解できなかった。ただ、綺麗になった同級生に興味が湧いただけだった。 「貴方は、もう忘れたでしょうけど、私は雨のなか傘の下で一歩も歩けなくなっちゃったの。あれでよかったんだと思う。当時の貴方達にとって、女の子なんて大した意味は持っていなかったのよね。ムーから聞いた。ムーが今どうしているか知っている?興味もないでしょう?」 「ムーって俺の彼女だった武蔵亜矢のこと?」 「名前ぐらいは覚えてるのね。でも、その名前を平気で口にできるなんて、貴方の人間性が分かるわ」 「何を言っているのか、さっぱり分かんねぇ」 「分からない人には一生わからないのよ!私は帰るわ。もう、2度と同窓会なんて来ない。ドキンともしないしね」 さちは、剛史に言い捨てるとホテルのロビーを後にした。 ムーだった武藤亜矢は、剛史の彼女になり、その後順繰りに剛史のお仲間の彼女にされたのだ。その体験は彼女の心を徐々に蝕んでいった。彼女に落ち度が無かったとは言えない。あの言いっぷりでは剛史は、自分がムーを振った後の彼女のことは本当に知らないのかもしれない。  それでも、ムーが障害年金の相談に、さちが勤める事務所に現れた時には、その変わり様に驚いた。
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