お父さんはサンタクロース

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 子どもたちがテレビに熱中している間にせっせと夕食の準備をする。ローストビーフのソースをかけて、と……しまった!  袋の口を勢いよく開けすぎた! 顔にソースがかかってしまった。慌ててティッシュで顔を拭く。やはり料理……と言えるかは分からないが、慣れないものだ。 「おーい、夕食の時間だよー」 「もう少しだけ、テレビ見たい!」  やはりそうなるか。長男はもうすぐ小学生。ちょっとした反抗期みたいなものだ。  夕食は子どもたちに好評だった。私も子どもたちの笑顔を見て満足だった。これが私にとってのクリスマスプレゼントだ。さて、問題はプレゼントだ。  子どもたちが寝静まったのを見計らって、サンタのかっこうに着替える。ヒゲがチクチクと痛い。  やっとのことで着替え終わると、プレゼントを持って子ども部屋に入った。足音を立てないようにそっと歩く。  痛い! なんか踏んだ! 次男がおもちゃを片付けていなかったらしい。肝心な時になんたる実態!  パチッと音がしてあたりが眩しくなる。 「あ、サンタだ!」  次男が電気をつけたらしい。これはまずい。 「あれ、サンタさんって、もっと太ったイメージだったのに」と長女。  太ってない方が健康にはいいんだよ! と思わず反論したくなる。 「サンタなんていないよ! だって、この前、本で読んだもん! サンタの正体はお父さんだって」  くそ、次男のやつ、本が好きなのはいいが、こんなときにそれを言うな。  三人が疑わしげに私を見ている。まずい、なんとかして切り抜けなければ。  なぜか知らないが、長男が私の顔をジーっと見ている。何故だ? 顔に触れると、ローストビーフのソースが手についた。これは決定的な証拠だ! 「おい、サンタの正体がお父さんなわけないだろー。お前、本を信じすぎだよ」  あれ。長男はソースに気づいたわけではなかったのか? 「ほんとー? なら、サンタさん、握手しようー」と長女。  よし、あとはタイミングを見計らって部屋を出るだけだ。握手なんてお安い御用だ。 「おい、サンタさんは今日は大忙しなんだぞ。やめとけよ」 「はーい」  長男ナイス! これで私の仕事も終わりだ。 「サンタさん、また来年ね!」 「トナカイさんに、よろしくー」  子供たちが手を振る。私も手を振りかえす。その時だった。長男がウインクをした。  そうか、私がサンタを演じていると知っていながら、二人を大人しくさせたのか!    あいつなりに二人の夢を守ったに違いない。子どもはいつの間にか成長するものだ。  さて、来年のプレゼントは何にするかな。
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