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第0章 プロローグ。
西暦2024年10月09日〈水曜日〉
今年の夏は極めて厳しい猛暑が続き、
10月に入って漸く涼しく…
西原美國「涼しい通り越して寒いわ!何なの…?この恐ろしいくらい激しい寒暖差は…?」
3月になったら35歳になり…
早く誰かの元に再嫁したいと切実に願っている西原美國が1人寂しく…
文句を口にしていると…
西原美國「…まさかの濡れ鼠…」
愛媛県の松山市衣山にあるショッピングモールの駐車場へとたどり着いた西原美國は突然の通り雨によりずぶ濡れとなってしまいました。
美國の住んでいるアパートは、
松山市北条にあるので衣山に向かう必要はないのですが…
美國「仕事の疲れを癒すには…
大好きな人を巨大スクリーンで見つめるのが1番だと私は思うのよ…」
西原美國の会社では誰かとコンビを組んで2人一組で仕事をすると言う二人三脚のような会社独自の規律があり…
遠野行成「西原さん、仕事終わったら何するの?僕は…」
美國が今日コンビを組んだ…と言うより無理矢理組まされたのは…
美國「仕事の時にプライベートのお話は返答に困りますのでお答え出来ません…。」
美國の好みである寡黙で口が堅くて奥手な男子ではなく陽気で口が軽くて喋るのが大好きな先輩・遠野行成。
三橋友梨香「美國さん、遠野さんのお世話宜しくね、あの人、喋って喋って喋り倒すからあまり関わりたくないんだ…。」
三橋友梨香を始めとする同じ部署に所属する女子社員からは美國と同じ理由で嫌われている遠野といつもコンビを組まされるのは…決まって美國で…
遠野「西原さんは僕と組む運命ね。」
仕舞いには簡単に運命だなんて言葉まで使用する程のお喋り男に皆はあきれ果てるしか方法がありませんでした。
美國「…運命って言葉が勿体ないので使わないで頂けると幸いです。」
美國を辟易させる先輩…遠野の世話を頑張った御褒美に美國はずぶ濡れになりながらも映画館へと向かいました。
すると…
石田慶樹「お客様、そのような濡れ鼠状態で映画を御覧になりますとお風邪を召しますよ?」
これで…真面目な顔と含み笑いなしで話しているなら立派な映画館の支配人だと感心するかも知れませんが…
美國「…含み笑いを押し殺しながら話されても全く説得力がありませんよ?石田支配人…!」
石田支配人こと石田慶樹は、
西原美國の元夫でこちらも婚活で毎日を慌ただしく過ごしておりました。
慶樹「復縁しませんか?お客様?」
仕事とゲームが生き甲斐の男である
石田慶樹は生活費を美國に出す事もなく美國の給料は全て生活費に回り…
美國「貴方のせいで映画を観るお金もなく毎日の生活にも苦労していたあの日に戻る愚か者はおりませんわ…!」
慶樹「…耳鳴りするから耳元で大きな声を出すのは…辞めて頂けると有難いんだけど…ね?」
石田慶樹の復縁願いが見事に拒否られたのはさておき…
映画〈碧く光る君の志〉の内容を
簡単に説明する事にします。
碧く光る君の志は…美國を始めとする歴史と2次元並びに美形が大好きな女性達を虜にする美浦 瑛章が主演を務める恋愛ファンタジー小説を原作とした織田信忠の物語。
織田信忠は、
本能寺の変で命を落とした織田信長の嫡男で本能寺の変が起きた頃にはもう既に織田の家督を継いでおりました。
柴田勝家「大殿、お館様はまだ松姫に想いを残されておられます。そのお館様に武田を滅せよとはあまりに酷ではありませぬか…」
信長「鬼柴田と呼ばれているはずのそなたが発する発言にしては…あまりにぬるい発言よのぅ…。」
映画を観に来たどこかの誰が…
代替わりした事を知らなかったようで
こんな言葉を口にしていました。
「信長がお館様ではなかったの…?」
代替わりした事さえあまり知られていない信忠ではありますが…何故、そんな彼が女性の心を動かすのかと言うと…それはやはり松姫の存在でした。
美國「逢った事もない、手紙だけのやり取りだけの許嫁を想い続けていたのよ…まさに愛の奇跡。」
松姫の名前は武田松。父親はまさかの甲斐国を治める武田信玄であり…、
同母兄は仁科盛信でございました。
織田信長を父に持つ信忠からすれば、
松姫は父の宿敵を父に持つ決して結ばれない存在だったのでございます。
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