計略

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 僕は喜八郎さんの横から一歩進み出ると、テーブルを一周しつつみんなの机上に白いカードを置いていく。 「これはなに?」天馬さんが質問する。   「みんなに配り終わったら説明するよ」  僕が再び喜八郎さんの隣に立つと、喜八郎さんが説明する。 「さて、暁殿と冬美さんを除くみなの前にカードがあるのう。そのカードを一斉に裏返して欲しい」  みんなが一斉にカードをひっくり返す。 「きゃああああ」 「おい、マジかよ」  僕がみんなに渡したのは、白いカードの脅迫状だった。 「ちょっと、これどういうこと!?」  さんが目の前にあるカードを指す。そこには「(こう)を以て自ら焼く」と書かれていた。この言葉の意味は「優れた才能を持つ人が、その才能によって身を滅ぼす」だ。  他のみんなの前にも、ことわざや慣用句が書かれたカードが置かれている。羽由美子さんは「朝には紅顔(こうがん)ありて夕べには骨となる」、秋原馬さんは「狗の飛び損ない」、夏草次さんは「闇夜にあり」、部勘次郎さんは「際で船を破る」、三日京子さんは「猿猴(えんこう)を取る」。どれも「失敗」や「破滅」などの意味があり、悪い言葉の数々だった。そして、それぞれにみんなの名前の一文字が入っている。もちろん、丸で囲われている。
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